10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない




社長は一瞬視線を鋭くし、そして微かに頷いた。


「その提案は採用する。君の判断が会社を守ったことを、他の部署も認識しておくべきだ」


その一言で、フロアに静かな波紋が広がる。

派閥争いが激しい中でも、黒崎蒼の言葉で私の行動が正当化され、少しずつ信頼が形成される瞬間を肌で感じた。

けれど同時に、彼の評価は冷静で、油断は許されない。


社内の視線が私に集まり、胸の奥で小さなプレッシャーが再びざわつく。私は一瞬目を閉じ、深く息を吸う。


怖いはずなのに、この緊張感がやみつきのように心地よくもある。


私は資料に手を置き、今日もまた数字の海に身を沈めながら、知らず知らずのうちに黒崎蒼の心理戦に引き込まれていく。


彼の視線の下で成長し、会社を守る責任を背負う――怖くもあり、同時に自分の存在が確かにここにあると実感できる瞬間でもあった。


「白石さん、早くも社長のお気に入りですね〜」


隣の席で椅子をそっと滑らせながら、美織ちゃんがいたずらっぽく耳打ちしてくる。その声はひそやかなのに、どこか楽しそうで、思わずため息まじりに笑ってしまう。


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