10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
営業部がどれだけ忙しいかは、分かっている。毎日外回りに出て、夜は会食、しかも契約や交渉で頭をフル回転させている井口の姿は、1年目の頃からずっと見てきた。
残業も当たり前のようにしているのも知っている。だから、正直言って強く注意することなんてできやしない。
「井口、今度からは気を付けてよね」
「ははは。でも、こうでもしないとお前の顔見れないんだよなー」
「井口に心配されなくても私はちゃんと仕事してるから!」
少し言い返すと、井口は容赦なく私の頭をわしゃわしゃとなでてくる。
もうっ、髪が崩れるじゃない!
思わず手で直そうとする私に、井口は楽しそうに笑う。
「そういや、新しい社長と話した?」
「まあ、海外との大きな契約あったからね…」
思い出すだけでも、頭が少し重くなる。
「俺は前の社長のほうがよかったな。今の社長は俺らと大して年齢変わんねーし。そこがやだ」
「あんた、それは自分のプライドの話でしょ?それに、私たちじゃ解決できないようなことがあって黒崎社長が助けてくれたから、今もこうして働けてるのであって」