10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
言い切ると、井口が一瞬目を細め、少し考えるようにしてから、ふっと笑う。
「お前、やけに社長の肩もつんだな」
その一言に、思わず胸の奥がぎゅっと縮むような気がして、一瞬固まってしまった。
確かに、井口の言うとおりだ。
初めは、うちの会社を潰してひとつでもライバル会社を減らそうと思って買収しただけじゃ?なんて穿った見方をしていたけれど、正直、黒崎社長のもとで働くことを密かに楽しみにしている自分がいるのも事実だった。
「さては、あのルックスに絆されたか?」
「なにバカなこと言ってんのっ」
思わずペチ!と軽く腕を叩く。
美織ちゃんに限らず、井口までそんなこと言うなんて。社長のルックスにほだされているのは、そっちのほうでしょうが!
でも井口は笑いを止めずに、軽く腕時計を確認してから「じゃ、そろそろ行くわ」と言う。
「あ、今度飲みいこーぜ」
「はいはい」
大きく手を振ってオフィスを出ていく背中を見送りながら、これからまた外回りにでも行くのだろうか、と心の中で想像する。
さて、自分も今日の仕事を片付けなくちゃ。