10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「驚かせて悪かった」
「へっ?あ、いえ!これは私のせいなのでっ」
だから、もう~っ…!
手、放してください、なんて口に出せるわけもなく、心臓はうるさいくらい暴走していて、全身が熱を帯びる。
ぎゅっと目をつむり、早く時間よ進め!なんて思っていると、社長が水を止めて、私の手をそっと放した。
「もう大丈夫そうか?」
「……はい、ありがとうございます」
指先が一瞬で離れた感触に、少し名残惜しさを感じる。
あぁ、もう…こういうところに、自分の経験のなさというか…。
最近めっきり減っていた、こういうときめきに動揺してしまった自分がいる。
「情けないところを見せてしまい、すみません…」
「いや、それはいいんだが…それより」
社長は軽く頷きながら給湯室を出て、私のデスクの前に立った。
それより…?
心の中で疑問符を浮かべながらも、少し速足でついていく。