10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
社長はデスクに置いてあったまだ処理しきれていない書類を手に取り、目を走らせながら淡々と言う。
その真剣な目に、どう答えればいいのか焦りが募る。
まずい。私に、この仕事量は無理だ、と思われてしまったら、今後、あの前の海外との大きな契約のような仕事は任せてもらえないかもしれない。
「…っ…でも、これは」
言い返そうと顔をあげると、社長の鋭い目が書類の上からちらりとこちらをのぞく。
「お前には、常に万全な状態でいてもらわないと困る」
「……それって、どういう…」
そう聞きたかったのに、突然社長のポケットから着信音が鳴り、言葉はそこで遮られてしまった。
社長は書類をデスクに戻し、少し面倒くさそうにスマホを耳に当てる。
「もしもし」
電話の相手は誰か分からないが、業界用語や取引先の名前が飛び交うのを見るに、仕事関連だろう。
あんなことを私に言いながら、社長だって、この時間までここにいるということは残業してるってことじゃない。