10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
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翌朝、私はいつもよりほんの少しだけ早く会社に着いた。
まだ人もまばらで、静かなはずのオフィス――なのに、その空気はどこか落ち着かなくて、見えない波紋が広がっているみたいにざわついていた。
新年度だから、きっとそのせいだ――そう思おうとしたけれど、どうにもそれだけじゃない気がして、胸の奥に小さな引っかかりが残る。
けれど、考えても仕方がないと気持ちを切り替えて、自分のデスクに向かうと、その違和感を一瞬で吹き飛ばすような明るい声が飛び込んできた。
「白石さん、おはようございます!研修期間お世話になりました。改めまして、今日から経理部に配属された早乙女美織です。よろしくお願いします」
振り向けば、ぱっと花が咲いたみたいに笑う美織ちゃんが立っていた。大きな瞳はきらきらと輝いていて、その真っ直ぐさに、思わずこちらまで背筋が伸びる。
研修期間の頃から、彼女はとにかく目立っていた。覚えも早いし、動きも早いし、何より仕事に対する姿勢が真摯で、周りの空気まで前向きに変えてしまうような不思議な力を持っている子だった。
正直、上司としてはすでにかなり期待している存在で、これから一緒に働くのが楽しみでもあり、同時に少しだけ気が引き締まる思いもあった。