10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
私は、誰かに頼りたかったのかな。こんな風に、誰でもいいから、ただ優しく頭を撫でられたかったのかな…。
この前もそうだったけど、なんでこの人は、こんなにも私のことに気づいてくれるのだろう。
たまたま、毎日残業してるから?それが目に付くから?社員だから?
理由はわからない。でも、わからないまま胸がぎゅうっと苦しくなる。
「白石。俺は今から出社するが、お前は今日休め」
その言葉に、一瞬耳を疑った。
「……えっ、それはっ!」
「経理部には話を通してある。午後から病院の予約をとったから、迎えに来る。それまで、ここにいろよ。荷物はリビングに置いてある」
「え!?」
いつもながらの冷静で鋭い口調で告げられ、思わず目を見開く。
か、勝手に……!?
立ち上がった社長は私を見下ろすようにして、いつもの鋭い目つきで問いかけてきた。
「返事は?」
その視線に、ごく、と息を飲む。
思わず言葉を探すも、社長相手に逆らえるわけがない。
「……はい」
渋々答えると、社長はフッと笑みを浮かべ、無言で部屋を出て行った。
その背中を見送る間、部屋に残された私の心は、まだ落ち着かない。
休むようにと言われたことに、少し戸惑いながらも、どこかほっとしている自分がいる。
社長の部屋、朝の光、そしてさっきまでの出来事……頭の中が整理できず、胸の奥にくすぶる温かさと緊張が混ざり合って、どうにも心が忙しい。