10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
それまで、ここにいろよ…と言われても、心の中では戸惑いが渦巻いていた。
恐る恐る立ち上がり、部屋の扉を押す。
長く続く廊下をなんとなく壁に手をつきながら歩いていると、やがて扉が開いた部屋が見えた。
チラリと覗くと、そこはリビング。
目に入ったのは……あ、私の荷物!
大きすぎるソファの真ん中に置かれ、昨日着ていた服もきれいに畳まれている。
ほんとに……ほんとに黒崎社長が私の服を……!?覚えていないけれど……!まったく覚えてはいないけれど!
今はひとりのはずのリビングなのに、あちこちに社長の気配を感じてしまい、ここで着替えることさえ恥ずかしい気持ちになってしまう。
「……やめよう、やめよう。社長はそんなつもりじゃないし。私だって……」
さっきから頭の中で考えがぐるぐる回る。どうしてこんなにドキドキしているのか、自分でもわからない。
一旦、落ち着こう。冷静になろう。
ふぅーっと大きく息を吐き、やっと着替えに手を伸ばす。
それにしても……大きなお家。
マンションの一室ではなく、やっぱり社長の家は一軒家なのだろうか。
着替え終わって、今度はパジャマをどうするか迷う。
勝手に人様の洗濯機を使うわけにはいかないし、でも昨日はお風呂に入れていない……幸い汗はかいていない。
考えた末、着ていた服はきれいに畳み、ソファの上に置くことにした。