10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
15階に着くと、私は息を整えながら速足で経理部へ向かう。
オフィスのドアを開けた瞬間、
「あれ?白石さん!?体調大丈夫なんですか!?」
美織ちゃんの心配そうな声が飛んできた。
「美織ちゃん、ごめんね!もう大丈夫!」
笑顔で答えると、ホッとした表情を浮かべる美織ちゃんが、私の後ろにいた井口に目をやる。
「井口さん。また白石さんのストーカーしてるんですか?」
「ちげーよ!領収書渡しに来たんだよ!」
井口は慌てて言い訳し、二人は何やらガミガミ騒いでいる。
その間に私は自分のデスクへ向かう。
すると、部長が驚いた顔で声をかけてきた。
「白石!?お前、大丈夫なのか!?」
社長はいったい、私のことを部長にどう説明したのか。
「もう全然大丈夫ですよ」
笑顔で答えるが、部長はまだ心配そうにしている。
「いやー参ったよ。朝っぱらから社長から電話かかってきて何かと思えば、白石が倒れたって。ついでに、白石に仕事を任せすぎだと怒られたよ。白石、悪かったな」
「……え、」
……違う、部長に悪かったなんて言われたくない。
部長だって、今大変なことを抱えているのを私は知っている。いい人だということも、星川商事のころ、社員を助けてくれたのも部長だということも、紗耶香から聞いている。
「部長、私、ほんとに無理してないんで……」
少しでも会社のために、みんなのために力になれればって。
だけど、よかれと思ってやってきたことが、こんなことを言われるなんて…。
立ち尽くしてしまい、視線はデスクの上の書類に向けられたまま、どうしていいかわからずに固まってしまう。
「おい、なんでここにいるんだ」
後ろから低く響く声に思わず振り向く。