10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「…く、黒崎社長」
……こんなにも早く見つかるとは、全く予想していなかった。
「経理部長が呼んだのか?」
社長がそう言った瞬間、オフィス内がざわざわと動きだす。
周囲の社員たちの視線が、まるで針のように私に刺さる。部長は困ったような顔で俯き、何も言えずに立っている。
「ち!違います!私が勝手に来たんです!」
思わず叫ぶように言い訳をする。部長のせいじゃない、責められる筋合いはない。
だが、社長は私の顔をじっと見て、ため息をひとつついた後、強引に手を取って引っ張り始める。
私は抵抗する暇もなく、そのままオフィスを出ることになった。
「今日は休めって言ったよな?」
「で、でもっ……」
「ひとり休んだくらいで、会社は止まらねーんだよ。代わりはいくらだっている」
冷たく突き放すようなその声に、胸の奥がチクリと痛む。
「…っ、」
そうだけど。
そうかもしれないけど、私の仕事なんて、代わりはいくらでもいる。
そんなことは頭ではわかっている。
でも、そんな冷たい言い方しなくたっていいじゃない。