10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「美織ちゃん、今日なにかあるの?朝から騒がしいね」
「それが、なんか大きい話があるみたいで…」
大きい話?
美織ちゃんも声を潜めながら、ちらりと周りを見渡す。その仕草につられて、私も無意識に視線を巡らせる。
その時、フロアの入口が静かに開いた。視線が一斉にそちらへ向く。
現れたのは部長だった。
普段と変わらないはずのその姿が、今日は妙に重く見える。
「今すぐ、全員会議室に集まってくれ」
低く、短い一言。
その声が落ちた瞬間、ざわついていた空気がぴたりと止まり、代わりに張り詰めた緊張が一気に広がった。
まるで、見えない糸で全員の呼吸が同時に引き締められたみたいに。
…………これは、ただ事じゃない。
私は机の上にあった資料を手に取りながら、その紙の端がわずかに震えていることに気づいた。
私は資料を持つ手をぎゅっと握りしめながら、他の社員たちと一緒に会議室へ向かった。