10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



……もういいや。今日は、黒崎社長の言う通り、休もう。これ以上考えたって、きっと何も変わらない。だったら、今は寝てしまった方がいい。


そう決めた瞬間、体の力が一気に抜けた。ドライヤーを止めて、簡単に髪を整えると、私は今日目を覚ましたあの部屋へと足を向ける。


ドアを開けると、見慣れないはずの部屋なのに、なぜか少しだけ安心している自分がいた。ふらふらとベッドに近づいて、そのまま考える間もなくダイブする。


ここが今日から私の部屋になるのかぁ……そんな現実味のないことをぼんやりと考えながら、私は枕に顔を埋めた。

ふかふかで、少しひんやりしていて、さっきまで張り詰めていた神経がじわじわとほどけていくのがわかる。

目を閉じると、急に体が重くなって、本格的な眠気が押し寄せてくる。


……あれ、なんだかいい匂いもする。朝は気づかなかったけど…柔らかくて、清潔で、どこか落ち着くような香り。

これって、この部屋の匂い?それとも……あの人の?そんなことを考えた瞬間、はっとして目を開けた。

もしかして今の私、ちょっと変態くさいこと考えてる?いやいやいや、違う違う、これはただの環境の問題であって、別に深い意味なんて!

そう自分に言い訳しながら、私はごろん、と寝返りを打った。

今度は仰向けになって、ぼーっと天井を見つめる。


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