10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
……そういえば、この同居生活。いや、同居って言っていいのかな。まだ実感なんて全然ないし、そもそもこれは一時的なもののはずで……そうだよね?
ここには一体、いつまで住めばいいんだろう。数日?それとも数週間?まさか……一生?いやいや、それはさすがにない。
思わず小さく首を振る。
でも、この家のどこにも、“恋人がいる”ような気配はなかった。女性物の私物もなかったし、誰かと暮らしている痕跡もない。
……まあ、私の分のアメニティは、あの神宮寺さんが完璧に用意してくれていたけど。
「いつかは結婚するんだよね……」
ぽつりと、独り言がこぼれた。
相手は黒崎グループの御曹司。きっと、周りが放っておくはずがない。政略結婚だってありえるし、もうすでに婚約者がいたって何も不思議じゃない。むしろ、その方が自然なくらいだ。
そんなことを考えているうちに、胸の奥が一瞬だけチクりと痛んだ。
……なんで?自分でも理由がわからなくて、少しだけ戸惑う。
「……私には、関係ない!」
その違和感を振り払うように、私は勢いよく枕に顔をうずめた。
ふわっと広がる、さっきと同じ爽やかな香り。
「……社長」
気づけば、小さくその言葉を呟いていた。
柔らかなベッドに包まれながら、私はそのまま、何も知らないまま深い眠りへと落ちていった。