10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
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「し……いし」
「……ん」
遠くから、誰かが呼んでいる気がする。意識の奥でぼんやりと響くその声に、うっすらと眉を寄せた。
「そろそろ起きろ」
……起きろ?誰に言ってるの……?
「白石」
その名前をはっきりと呼ばれた瞬間、意識が一気に浮上した。
パチッと勢いよく目を開けると、目の前にいたのは――黒崎社長。
「なっ……!?え!?」
「起きれるか?体調は?」
低くて落ち着いた声が、すぐ近くで響く。
た、体調!?
「だ、大丈夫です……!」
反射的にそう答えたものの、寝起きで頭がまったく回っていない。というか、それどころじゃない。なんでここにいるの!?いつから!?私、完全に寝てたよね!?
やばい、私……寝起き!?髪、絶対ぐしゃぐしゃだし……それに、当然すっぴんだし……!
一気に羞恥心が押し寄せてきて、私は慌てて手ぐしで髪を整えながら、枕を引き寄せて顔を隠した。
「なんで隠すんだよ?」
不思議そうな声と一緒に、ほんの少しだけ眉間に皺が寄る。その表情に、少しムッとする。
いやいや、普通に考えて、女性が寝てる部屋に勝手に入る方がどうかと思うんですけど。
「すっぴんなので」
できるだけ冷静を装って答えると、「これから先、毎日一緒なのに?」と、あっさり返された。