10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「……とっても美味しいです」
気づけば、頬にご飯をためたまま、素直な感想がこぼれていた。
すると、黒崎社長はクスッと小さく笑って、「それは良かった」と柔らかく言った。
その表情に、また胸がドクンと跳ねる。
……もう、さっきからそうだけど。というか、ここ最近ずっと。仕事中に見せるあの冷静で近寄りがたい社長とは違う、プライベートの顔を見てしまっている気がする。
少し目を細めて、穏やかに笑うその表情に、いちいち反応してしまう自分がいる。
でも、これは仕方ない。不可抗力だ。
だって……顔がいいから。こんなの、相手が黒崎社長だったら、誰だってこうなるに決まってる。
「明日、午前中でもいいか?」
「え?」
「荷物取りに行くの」
「ああ……」
そうだった。私、ここに住むことになったんだ。
改めてその事実を突きつけられて、少しだけ現実感が増す。
ほんとに……ここで生活するんだなぁ……。
「あの……いつまでですか?」
「ん?」
「ずっとここにいるわけにはいかないですし……」
こんな高級マンション、どう考えても私には分不相応だ。夢みたいな空間だけど、現実じゃない。
なにより――。
「私と社長が一緒に住んでるなんてバレたら、どうなるか……」
そこまで言いかけて、少しだけ声が小さくなる。