10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



だって、この人には……もしかしたら、もう決まった相手がいるかもしれないんだから。婚約者がいたって、何もおかしくない立場の人だ。そんな人と同じ家に住んでいるなんて知られたら、どうなるのかなんて想像もつかない。

スキャンダル?会社に迷惑?それとも――。


恐る恐る、社長の様子をうかがう。すると、黒崎社長は小さくため息をついて、静かに箸を置いた。


「バレて困ることないだろ」

「え?」

「何を心配してんのか知らねーけど、お前が気にすることじゃない」


一瞬、何を言われたのか理解できなくて、思考が止まる。

でも次の瞬間、胸の奥がズキッと痛んだ。


……なに、それ。気にすることじゃないって、どういう意味?これから一緒に住むのに?私だって当事者なのに、なんでそんなふうに切り捨てられなきゃいけないの。そもそも、この状況を作ったのは社長のくせに……。


じわじわと、抑えていた感情が込み上げてくる。

戸惑いも、不安も、全部まとめて、怒りに変わっていくのがわかった。


「じゃあ、もう勝手にしてください!」


気づいた時には、勢いよく箸を置いていた。カタン、と少し大きな音が響く。


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