10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
「私も勝手にしますから!」
自分でも驚くくらい大きな声が出た。こんなふうに感情をぶつけたの、初めてかもしれない。しかも相手は、あの黒崎社長。
言った瞬間に、はっと我に返る。
やばい、私……なに言ってるの……。恐る恐る顔を上げると、黒崎社長がほんの少し目を見開いていた。驚いたような、その表情を見た瞬間、胸がぎゅっと締め付けられる。でも、もう止まれなかった。
「……ご馳走様でした!」
それだけ言って、椅子から立ち上がる。
もういい、知らない。どうなってもいい。クビになったって構わない。こんなふうに扱われるくらいなら、こっちから願い下げだ。
優しい人だなんて思った私がバカだった。あんなふうに穏やかに笑う顔に、少しでも安心した自分が情けない。
あの人の下で働くくらいなら、いっそ辞めてやる――そんな勢いのまま、私はリビングを飛び出した。
廊下を早足で進んで、自分の部屋のドアを勢いよく開ける。そのままベッドに飛び込んで、顔を押し付けた。
もう、ほんとに知らない。明日になったら、ここから出ていってやる。荷物だって取りに行く必要なんてない。あんな人の言うことなんて、もう聞かなくていい。
「……。」
でも、枕に顔を埋めたまま、じわっと視界がにじむ。