10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
きっと、すぐそばに座っている。謝らなきゃ。分かってる。急に怒鳴ってしまってごめんなさいって。食器も片付けずに出てきてしまってごめんなさいって。それに、こんなふうに感情的になるなんて社会人として失格だって。
でも――言葉が、出てこない。
喉の奥がぎゅっと詰まったみたいに、何も言えなくなる。
「白石」
「……っ、」
「梨沙」
その名前を呼ばれた瞬間、心臓が強く跳ねた。
……なんで、今それを言うの。ずるい。そんな呼び方、されたら。
「ずるいですよ……」
絞り出すようにそう呟いて、ゆっくりと顔を上げる。
視界に映ったのは、眉を下げて、少しだけ困ったように目を細める黒崎社長の顔だった。
……なんで、そんな優しい顔するの。さっきまであんな言い方してたくせに。
「悪かった。お前の気持ちをちゃんと考えていなかった」
もぞもぞと体を起こすと、社長はクスッと柔らかく笑って、そっと私の頬に手を伸ばしてくる。