10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
……なにそれ。そんなこと言われたら、余計に意識してしまう。顔が熱いのが自分でもはっきり分かるのに、どうすることもできない。
「もう一回、呼んでみろ」
低く囁くような声が、すぐ近くで落ちる。ぞくっと背筋が震えた。
「む、無理です……!」
思わず首を振る。さっきので限界なのに、これ以上とか本当に無理。
「さっきは呼べたのに?」
楽しんでるでしょ、絶対。そう思うのに、その視線から逃げられない自分がいる。
「あれは……その……」
言い訳を探そうとするけど、何も浮かばない。ただ、さっきの自分の声と、名前を呼んだ感触だけがやけにリアルに残っている。
「梨沙」
また、名前を呼ばれる。そのたびに、胸がぎゅっと締め付けられるみたいに苦しくなるのに、嫌じゃないと思ってしまうのが、いちばん厄介だ。
「顔、真っ赤」
くすっと笑いながらそう言われて、反射的に顔を手で覆う。