10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
荷物を両手に抱えて車へと戻ると、社長はすでに運転席から降りていて、後部座席のドアを開けてくれていた。こういうところに、育ちの良さって出るんだろうなって思う。
私は小さく頭を下げてから車に乗り込み、シートに深く腰を沈めた。ドアが静かに閉まる音がして、社長も隣に戻ってくる。
ちらりと横を見ると、社長は前を向いたまま、何かを考えているようだった。
「まだ時間あるがどうする?」
不意にそう言われて、私ははっとして姿勢を正した。
タイミングを見計らっていたはずなのに、いざ聞くとなると緊張してしまう。
「あの、聞きたいことがあるんですけど…」
社長はゆっくりと首を傾げて、続きを促すように視線を向けてきた。
「…家事の分担とかって」
ずっと気になっていたことだった。一緒に住むっていうことは、ただ同じ空間にいるだけじゃない。生活が重なるってことだ。だから、曖昧にしたままにしておくわけにはいかないと思った。
「それに…生活費とか」
言いながら、昨日の夜ごはんのことを思い出す。結局、全部ご馳走になってしまった。ああいうのが当たり前になるのは、やっぱり違う気がする。