10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



「全部俺がするから、問題ない」


間を置くこともなく、社長はあっさりと言い切った。驚くくらい迷いがなくて、逆に言葉を失ってしまう。

社長にとっては自分の家だから、他人に触らせるのが嫌なのかもしれない。そういう潔癖な一面があってもおかしくはない。でも、それにしたって全部って。


「それはさすがに…!私の面倒まで見てもらう必要ないですよ」


このままだと、どう考えても社長にとってデメリットしかない。負担が一方的すぎる。そんなの、対等じゃない。


「梨沙は何もしなくていい。そうじゃないと一緒に住む意味がないだろ」

「……。」


意味が、ないって。どういう意味で言っているのか、わからなくて、でも聞き返すこともできない。


「放っておくと頑張りすぎるところがあるからな。また倒れられたら困るんだよ」

「そう…かも、しれないですけど」


否定できなかった。実際、前みたいに倒れてしまう可能性だってゼロじゃない。そうだ。それ以外に理由なんてない。社長本人にだって、そう言われた。

社長は、私がまた倒れたりしたら責任を問われる立場にある。会社の信用だって関わってくる。だから、そうならないように管理する必要があるだけ。その一環として、社長秘書になるか、一緒に住むかを選ばせただけ。

合理的で、無駄のない判断。そこに、個人的な感情なんて入り込む余地はない。わかってる。ちゃんと、わかってるはずなのに。


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