10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
なんでこんなに胸が苦しくなるのか、自分でも分からなかった。ただ社長の一言一言がやけに心に引っかかって離れなくて、私はいったいこの人にどう思われたかったんだろうと、答えの出ない問いばかりが頭の中をぐるぐると巡る。
「お前がこれで負担を感じてしまうなら、元も子もないな」
そう言って黒崎社長は軽く肩をすくめ、フッと笑った。
「一緒に住むって言ったって、俺のことは気にする必要ねーよ。食事も別で構わない。金銭面は面倒くさいから、俺が全部出すって言ってるだけ」
「で、でも…」
だってどう考えても社長に負担が行き過ぎている。これじゃまるで私がただ養われているみたいで、いわゆるヒモと変わらないんじゃないかと、自分でも情けなくなる。
“監視”という名目があるとはいえ、こんなに至れり尽くせりでいいわけがない。
私は恋愛なんてしない、仕事に生きるって決めたはずなのに、29歳アラサー女の私がこんな状況に流されてしまって本当にいいのか?
「梨沙は、どうしたい?」
その声は驚くほど優しくて、黒崎社長は柔らかく微笑みながら私を見つめていた。
いつの間にか名前で呼ばれることが当たり前になっていて、今日だけでも何度も「梨沙」と呼ばれているのに、そのたびに心臓が無駄に跳ねるのはどうしてなんだろう。