10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない



きっとこんなことでいちいち反応しているのは私だけで、社長にとってはただの呼び方に過ぎないのに、それでも慣れる気配は一向になくて、むしろ呼ばれるたびに意識してしまう自分が嫌になる。

どうしたい?って聞いてくるのも、きっと昨日喧嘩したからで、こうして優しくしてくれるのもその延長線上にあるだけで、特別な意味なんてないはずだ。

そう思い込まないと、自分の気持ちがどこかに流されてしまいそうで怖い。だから私は余計な感情を押し殺して、あくまで部下として、仕事として、この人と向き合うべきなんだ。


「洗濯は別がいいです。気になるようでしたら、私はコインランドリーでもいいので」

「洗濯は別な。他は?」

「ご飯は私が作ります。そうすると必然的に残業を減らさないといけないことになるので、この同居が私の体調管理という名目なら、そっちの方がいいんじゃないでしょうか」


言いながら、これが正解なのか自信なんてまるでなかった。それでもせめて、自分にできることくらいはちゃんとしたかった。

だって私は女として!29歳のアラサーとして!全部を与えられるだけの存在にはなりたくない!こんなところでまで甘やかされてしまったら、本当に何もかも失ってしまいそうで怖い!


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