10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
反射的に、自分の両手をバッと見下ろす。
どこが?どう見ても乾燥しているし、ハンドクリームだって毎日ちゃんと塗れているわけじゃない。むしろ褒められる要素なんて一つもないのに。
「しゃ、社長の方が綺麗ですよ!」
気づいたときには、言葉が口から飛び出していた。
こんな形で自分の手を褒められるなんて思ってもみなかったし、動揺のままに、前から思っていたことをそのまま口にしてしまったのだ。でも、それは本心だった。
私のカサカサした手なんかより、社長の手の方がよっぽど整っていて、無駄がなくて綺麗だ。
「この前思ったけど、白くて細くて折れそうなんだよ」
折れそうだなんて、そんな大げさな…。
この前というのは、きっと私がコーヒーをこぼして小指を火傷したときのことだろう。そのときに触れられた指先の感覚が、今さらになって蘇る。
「それを言ったら私だって、あのとき……社長の指って、スラっとしてて綺麗だなって思ったんですよ。それなのに、私と違って大きくて男らしいなとも思ったし……」
そこまで口にしてから、やめておけばよかったのにと思うのに、止まらない。
「この手に握りしめられたら、安心するだろうな、とか……」
言い切った瞬間、時間が止まったような気がした。しまった、と思ったときにはもう遅くて、自分で言っておきながら一気に血の気が引く。