10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
今の、気持ち悪かったかもしれない。何を言っているんだろう、私は。仕事モードで接するって決めたばかりなのに、こんなのどう考えても距離感がおかしい。
取り返しのつかないことを言ってしまった気がして、顔から火が出そうになる。
「あ、あの!今のはっ……」
慌てて否定しようとしたのに、言葉はうまく繋がらなくて、焦れば焦るほど余計に怪しくなる。
そんな私を見て、黒崎社長はククッと喉を鳴らして笑った。
な、なに……?
「梨沙が、そんなに俺のことが好きだとは」
その一言に、頭の中が一瞬で真っ白になる。
「なっ……!手!手ですっ!社長の手!が!好きなんですっ!」
必死に言い返したつもりなのに、どんどん墓穴を掘っている気がしてならない。
べ、別に社長のことが好きだなんて、一言も言っていないのに!
カッと顔が熱くなるのが自分でも分かって、誤魔化すようにキッと社長を睨みつける。すると社長は、そんな私の反応さえ面白がるようにニッと口角を上げて、からかうような視線を向けてきた。
そして何の躊躇もなく、私の右手にそっと触れる。
「……っ、あの」
声を出した瞬間、指先に意識が全部持っていかれる。