10年越しの溺愛——御曹司は私を逃さない
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社長と同居を始めて、あっという間に2週間が経った。
正直、もっと気を遣って疲れるものだと思っていたのに、この2週間は驚くほど平和だった。拍子抜けするくらい、何事もなく日常が過ぎていく。仕事に関しても、少しずつ余裕が出てきている。
美織ちゃんが着実に業務を覚えてくれて、簡単なものなら任せられるようになったのは大きい。前みたいに全部を抱え込まなくてよくなっただけで、こんなにも違うのかと実感していた。けれど、それ以上に違和感を覚えていることがある。
「部長。手が空いているのでそれ、こっちで処理しますよ」
いつも通り声をかけたつもりだったのに、「いいよ、いいよ!白石は休憩しておいで」と、なぜかやんわりと断られる。
最初は偶然かと思った。でも、それが一度や二度じゃない。部長だけじゃない。ほかの同僚たちも、同じように気を遣うような言い方で、私に仕事を振らないようにしてくる。
明らかにおかしい。なんで?と首を傾げていると、隣に座っていた美織ちゃんが、椅子をすっと滑らせて距離を詰め、小さな声で囁いた。
「みんな、白石さんが社長の恋人だからって、遠慮してるんですよ」
「こっ……恋人……!?」
思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を押さえる。
幸い、オフィスは電話の着信音や話し声でざわついていて、私の声はそれほど目立たなかったらしい。周囲の視線が集まっていないことに、ほっと胸を撫で下ろす。