カーテンコールはまだ鳴らない。
* * *
駅前のファミレスは、夜でもそれなりに明るかった。
ガラス張りの店内から漏れる光が、歩道を白く照らしている。
「ここでよくね?遅い時間でもやってるし」
「ファミレスかぁ……ま、軽くならちょうどいいか」
自動ドアが開くと、油と甘いデザートの匂いが混じった
温かい空気が流れ出てきた。
「いらっしゃいませー。二名様ですか?」
「はい、二人で」
案内されたのは、窓際のボックス席。
向かい合って座ると、さっきまでの距離の近さが嘘みたいに広がる。
メニューを広げながら、侑玖が言う。
「響華なに食う?また担々麺とかいく?」
「この時間に担々麺は攻めすぎでしょ」
「えー。昔めっちゃ食ってたじゃん」
「高校生の胃袋なめないで」
軽口が、自然に交わされる。
そのやりとりは昔と何も変わらない。
けれど。
侑玖の指先が、ほんのわずかに落ち着きなくメニューの端を
叩いている。