カーテンコールはまだ鳴らない。

パソコンの電源を落としたその瞬間、隣のデスクから声が⾶んできた。

「報告書、終わったんですか?」

声に⽬を向けると、無造作ヘアの⿊髪に⿊マスク、⿊いスーツに

⿊ネクタイという、⾒事なまでに全⾝真っ⿊な男が顔を出していた。

響華の後輩であり、ツーマンセルのバディでもある五⽊蓮だ。

無愛想な⽬つきでこちらを⾒つめるその姿に、響華は軽く頷いた。

「そうそう、やっと終わった」

響華が肩の⼒を抜きながら返すと、蓮は少し⽬を細めて、

ただ⼀⾔――

「お疲れ様です」

その簡潔な⾔葉に、落ち着いた空気が流れた。

無愛想で感情を表に出さない蓮だが、この瞬間だけはわずかに

柔らかさが⾒え隠れしている。

時計を⾒やると、もう1時を過ぎていた。

休憩を⼊れようと⽴ち上がった響華は、グレーのパンツスーツについた

座り皺を軽く伸ばし、椅⼦にかけていたジャケットを⽻織った。
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