カーテンコールはまだ鳴らない。
転がる運命
その日の夜。
組対一課のオフィスは、昼間の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
蛍光灯の白い光だけが、規則正しく並ぶデスクを照らしている。
カタ、カタ、とキーボードを叩く音が、ぽつんと響いていた。
響華はモニターに向かい、竜崎組の組員リスト開示を上に掛け合うための
資料をまとめていた。
真っ白すぎる経歴。
綺麗すぎる裏帳簿。
尻尾を一本も出さない慎重さ。
――だからこそ、見たい。
前科者だけでなく、構成員すべての名前が記載されている名簿を。
何か、引っかかるものがある気がするのだ。
キーボードに伸ばしていた指が、ふと止まった。
ポケットの中で、スマホが震える。
静まり返ったオフィスでは、その小さな振動さえやけに大きく感じた。
響華は一度息を吐き、椅子の背もたれに体を預ける。
首を軽く回してから、スマホを取り出した。