カーテンコールはまだ鳴らない。
扉が閉まる。
夜の廊下は、昼間よりも静かで冷たい。
ヒールの音が、規則的に響く。
エレベーターを待ちながら、無意識にポケットのスマホに触れる。
――いま近くいるし。
その言葉が、じわりと胸に広がる。
安心か。
それとも、危うさか。
自分でもわからない感情を抱えたまま、
燐音響華は、夜の街へと足を向けた。
その頃。
誰もいない資料室の奥で、
黒いマスクの男が、静かにモニターを見つめていた。
そこに映っているのは――
“竜崎組構成員リスト”の文字。
その下に、新たに表示された一つの名前。
高瀬 侑玖。
蓮の目が、わずかに細められる。
静かな夜が、ゆっくりと軋み始めていた。