極上パイロットの一途な執愛
「――その話、愛里も知っていたんだ」

 そのつぶやきを聞いて、呼吸が止まった。

 蒼真さんも知っていたんだ……。
 ショックで言葉が出なくなる。

「その条件を知っているなら、愛里と一緒に寝ることはできないって、わかるだろ」

 聞き分けのない子どもに言い聞かせるような、静かな口調だった。

「でも……っ」

 食い下がろうとした私に、蒼真さんは首を横に振る。

「ごめん。俺の気持ちも考えてほしい」

 彼の口から出た拒絶の言葉が、胸に深く突き刺さった。


 結婚して一年で妊娠しなければ、蒼真さんと私は離婚することになる。それでも私を抱かないということは、蒼真さんは私との結婚を続けるつもりがないという明確な意思表示だ。

 彼の本心を知り、涙があふれそうになった。

「……わがままを言って、すみませんでした」

 かすれた声で言い、彼に背を向ける。

「愛里」

 背中越しに名前を呼ばれたけれど、振り返ることができなかった。
 これ以上蒼真さんの顔を見たら、涙がこらえられなくなるから。

 優しい蒼真さんに、泣き顔なんて見せたくない。そう必死に言い聞かせ、自分の部屋に戻る。

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