極上パイロットの一途な執愛
 彼に家に遊びに行きたいと言われ緊張しながら自室に案内すると、漫画が並ぶ大きな本棚を前にした彼は、『こんな漫画を読んでよろこんでんの?』と顔をしかめた。

『未だに漫画の中の恋愛に憧れてるなんて、正直引くわ』

 その言葉にショックを受けた私は、それ以降うまく彼と接することができなくなり、結局すぐに別れてしまった。

 そしてそのことがきっかけで、本当の恋愛をして傷つくよりも、漫画の中の幸せな恋愛を眺めているほうがずっといいと思うようになった。

 二十七歳になった今でも、毎晩のように少女漫画を読んで甘いシチュエーションにドキドキして悶えている私。

 そんな素の自分を知られたら、周囲の人に引かれるに違いない。

「なんて、ゆっくりしてる場合じゃない。仕事に行く準備をしなきゃ」

 つぶやきながら、ベッドから起き上がる。

 身支度をして部屋を出ると、アパートの隣のドアが開いた。

「あ、おはようございます」

 笑顔で挨拶をしてくれたのは、隣の部屋に住む奥村さんという男性。私と同い年だという彼は、仕事で関西から半年ほどこちらに来ているらしい。

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