極上パイロットの一途な執愛
 職場では旧姓を使い、結婚していることも秘密にしているから、朝比奈の姓で呼ばれることはほとんどなかったけれど、それでもこうやって離婚届を前にすると、さみしさと未練がわいてくる。

 パイロットとして働く蒼真さんはロサンゼルスからのフライト中で、今頃太平洋上を日本に向かって飛んでいるところだろう。

 本当なら蒼真さんは今日の夕方に帰国するはずだった。けれど、ロサンゼルスの悪天候で離陸が遅れ、自宅に帰るのは深夜になるだろう。

 数日前。
 フライトへ向かう蒼真さんから、『結婚記念日の夜に、話したいことがある』と言われたことを思い出す。

 その真剣な表情を見た私は、ついに離婚を切り出されるんだと察してしまった。

 さみしかったけど、ショックはなかった。

 蒼真さんと夫婦になって一年。妻としての役目を果たせないままタイムリミットを迎えた私に、結婚生活を続ける資格がないことは、ちゃんとわかっていたから。

 優しい蒼真さんから離婚を切り出させるのは申し訳なくて、彼が留守のうちに部屋を出ていこうと決める。

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