極上パイロットの一途な執愛
 親の強引なすすめを断り切れず、婚姻届を出しただけで挙式も旅行もせずに始まった結婚生活なんだから、離婚届だけを残して出ていくくらいがちょうどいい。

 蒼真さんが帰ってきてテーブルに置かれた離婚届を見たら、自分から離婚を切り出さずにすんだとほっとするに違いない。

 これでもう、蒼真さんは好きでもない相手に気を使いながら生活する必要がなくなるんだから。

 夫婦として暮らした一年間。蒼真さんはとても優しかった。紳士的で穏やかで、いつも私に感謝を伝え労わってくれた。

 そう聞くと仲睦まじい夫婦のように思えるけど、蒼真さんの気遣いはあくまで他人行儀なもの。

 その証拠に結婚して一年経つのに、蒼真さんと私はキスどころか、ハグをしたことも、手を繋いだこともない。

 夫である蒼真さんに他人のように距離を置かれながら暮らすのは、とてもつらくてさみしかった。

 その結婚生活も、今日で終わる。

 私は両手で顔を覆い、ゆっくりと息を吐き出す。そして、小さくつぶやいた。

「せっかく結婚したんだから、少しくらい蒼真さんと夫婦らしいことをしたかったな……」

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