極上パイロットの一途な執愛
 航空機のトラブルに乗客として巻き込まれたのに、恐怖を抱くんじゃなく、パイロットを目指そうと思うなんて……。
 外見だけじゃなく、志までかっこいい。

 私が感心していると、朝比奈副機長が父のほうを見た。

「想定外のトラブルに見舞われたとき、香坂専務は操縦桿を握りながら、どんなことを考えていたんですか?」

 父は少し考えるように紅茶をひと口飲み、カップをソーサーに戻す。

「それは当然、乗客の命を守ることだけを考えていた。――と言いたいところだけどね」
「実際は、違うんですか?」
「正直に言うと、頭の中は妻と娘のことでいっぱいだったよ」

 その言葉に私は「え」と目を瞬かせる。

「着陸に失敗すれば、ふたりには二度と会えないかもしれない。そんな恐怖が何度も頭をよぎった」
「お父さん……」
「だけど、愛しい妻と娘を泣かせるわけにはいかない。意地でも生きて帰るんだと自分を奮い立たせて操縦桿を握っていた」

 普段は過保護で強引すぎる父に困らせられてばかりだけど、それ以上の大きな愛情を与えられていたことを実感し、胸が熱くなった。

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