極上パイロットの一途な執愛
「俺は、王子様なんかじゃないんだけどな」

 ぽつりとつぶやいた彼の言葉に、目を瞬かせる。

「蒼真さんは王子様じゃないですか。有能さを鼻にかけず、誰にでも優しくて、いつも穏やかで……」

 私がそう言うと、蒼真さんがわずかにこちらに体を傾けた。さらりと流れた前髪の間からのぞく、綺麗な瞳が私を捉える。

 そのまっすぐな視線に、少しどきっとしてしまう。そんな私の耳もとに、彼が唇を近づけた。

「――表面上はそう装っていても、心の中ではなにを考えているかわからないよ」

 いつもの穏やかさが嘘のような、低いささやきが鼓膜を震わせる。
 その場の時間の流れが止まったかのように、身動きが取れなくなる。

 戸惑う私のことを、蒼真さんがじっと見つめていた。

 どうしよう。なんだか蒼真さんの雰囲気がいつもと違う……。

 ごくりと喉を上下させたとき、玄関のほうから「ただいま~」と賑やかな声が聞こえてきた。

 その声に気付いた蒼真さんが、「残念」と小さくつぶやく。

「専務が帰ってきたみたいだね」

 その言葉をきっかけに、止まっていた時間が動きだしたように、肩から力が抜けた。

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