極上パイロットの一途な執愛
「か、勘弁してください」

 彼と手を繋いで歩くところを見られたら、全女性社員を敵に回すことになってしまう。

「じゃあ、素直に隣を歩いてくれる?」

 その綺麗な笑顔には有無を言わせぬ迫力があった。

 なぜか私の頭の中では、子牛が荷馬車に乗せられ連れていかれる童謡のメロディーが流れていた。
 





 飛行機の操縦は非常に責任が重く、神経を使う仕事だ。その心身への負担を減らすため、パイロットたちは基本的に会社が用意したタクシーで通勤している。

 職員専用の出口へ向かうと、黒いタクシーが待機していた。

 蒼真さんは後部座席のドアを押さえ、「どうぞ」と私に先に乗るよううながした。

「あ、ありがとうございます……」

 紳士的な振る舞いなのに、逃げ場をふさがれたような気分になる。

 緊張しながら乗り込むと、隣に蒼真さんが座った。
 狭い車内で、肩が触れそうなほど近い距離にいる。彼の存在を意識して、鼓動が勝手に速くなる。

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