極上パイロットの一途な執愛
 タクシーが走り出すと、「マンションを出てからは、どこで暮らしてるの?」とたずねられた。

「小さなアパートを借りて、そこに住んでます」
「場所は?」
「え?」
「住所を教えて」
「まさか、これからうちに向かう気ですか?」
「なにか問題ある?」

 その問いかけに、問題なんてありすぎます!と心の中で叫ぶ。

 部屋の中には少女漫画がたくさんあって、ベッドサイドにも漫画の本が積み上がっている。

 蒼真さんにそんな部屋を見せるわけにはいかない。絶対に引かれるし、気持ち悪がられる。

「あの、部屋に人を入れるのはちょっと……」
「部屋の中に入れろとは言わないよ。ただ、愛里がどこに住んでいるかだけは、知っておきたい」
「でも」
「どうせ、ご両親にはマンションを出たことをまだ話していないんだろう?」

 言い当てられて、言葉に詰まる。

 私たちの結婚は、強引な父が勝手にすすめたようなものだ。父が私がマンションを出たと知れば、自分の意に反したと蒼真さんを責めかねない。

 だから両親への報告はタイミングを見て慎重にするつもりで、今はまだなにも知らせていなかった。

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