社長、その溺愛は計算外です

午後、私は残された唯一のプロジェクトに向き合った。

中規模の食品メーカー『陽光フーズ』の在庫管理システム導入案件。今週の木曜日に最終提案のプレゼンテーションが控えている。

エレガンス・コレクションを外された今、私にはこのプロジェクトしか残っていない。

──絶対に成功させなければ。



水曜日の夜。二十二時を回ったオフィスには、私一人だけが残っていた。

人気の引いたフロアに、タイピングの音だけが乾いたリズムで響く。

画面に広がるのは、『陽光フーズ』への提案書。そこには、最新のAI需要予測機能や、複雑な自動発注システムがこれでもかと盛り込まれていた。

技術的には完璧だ。けれど、読み返せば読み返すほど、何かが引っかかった。

『現場の負担は、増やしたくないんです』

『新谷さん、うちはシンプルが一番なんだよ』

『まずは、一歩ずつ導入できるものがいいな』

担当の佐竹部長が何度も繰り返していた言葉が、耳の奥で蘇る。

今の私の提案書は、クライアントのためじゃない。自分の評価を取り戻すため、自分の不安を埋めるためだけの、独りよがりなもの。

──何をやっているんだろう、私は。
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