社長、その溺愛は計算外です
【新谷さん、夜分に失礼いたします。
一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。
圭佑さんは、覚悟のある方です。
でも、その覚悟を受け止められるかどうかは、あなた次第です。
水沢麗華】
スマホを持ったまま、私はしばらく動けなかった。
脅しではなく、忠告でもなかった。
ただ、問われただけ。
あなたは、彼が背負う「五万人の人生」ごと、愛する覚悟があるのか、と。
その問いが、深夜のオフィスに広がった。
私は、彼についていく覚悟が本当にあるのかな?
そもそも、まだ圭佑さんの彼女でも何でもない私に……。
そう自嘲しながらも、ふと思った。
カフェで向かい合った時、麗華さんは「愛していますか」という問いに、答えなかった。
たぶん、答えられなかった。
あの一瞬の沈黙を思い出すと、麗華さんもまた、何かと戦っているのかもしれないという気がした。
そして今夜、こうして私にメールを送ってきたことの意味も。
その痛みから逃れるように、私はきつく目を閉じる。
直後、デスクの上で再びスマホが震えた。
名前を見て、鼓動が小さく跳ねた。
『桐原圭佑』