社長、その溺愛は計算外です
梓を失うことか、会社の危機か。
どちらかを選ぶ、という話じゃない。
両方を守る。それだけだ。
二十四時間という猶予を与えられてから、すでに四時間が経過した。
解決策の糸口さえ掴めぬまま、ただ太陽の位置だけが高くなっていくことに、焦燥が募った。
俺は、苦い焦燥を吐き出すようにネクタイを緩める。
守りたいものが増えるほど、男は弱くなると思っていた。
誰かに弱みを握られ、大切なものを人質に取られる。かつての俺なら、それを「非効率な弱さ」だと切り捨てていただろう。
だが、今は違う。
彼女を失った世界で、会社だけを守り抜いたとして、俺の人生に何が残るというのか。
失いたくないものがあるから、俺は強くなれる。
誰にも、彼女も会社も奪わせはしない。
それでも、解決策より先に──一つだけ、確かめなければならないことがあった。
梓が、まだそこにいるかどうか。彼女の瞳の中に、まだ俺を信じる光が残っているか。
それだけ確認して、動き出したかった。
「行こう」
俺がオフィスを出たのは、午後二時を少し回った頃だった。
行き先は、ただ一つ。彼女のいる、あの場所だ。