社長、その溺愛は計算外です
ベンチに並んで腰を下ろすと、秋の風がコートの裾を揺らした。
前回とは、違う距離感だった。テーブルを挟まず、同じ方向に並んで座っている。
「先日は……言い過ぎました」
麗華さんが、前を向いたまま口を開いた。
「え……?」
「軽い気持ちで近づかないでください、と申しました。あなたと圭佑さんの関係は、軽いものじゃない。それは……分かっています」
私は黙って聞いていた。
「圭佑さんが、どれほどあなたを大切に思っているか」
麗華さんの声が、少しかすれた。
「以前から感じていました。認めたくなかっただけで」
カップをソーサーに置くような、静かな間があって。
「私も……圭佑さんに、愛されたかった」
風が、木の葉を揺らした。
「圭佑さんが私を見る目は、いつも礼儀正しかった。あなたを見る目とは……違います。私にはないものが、あなたにはある」
「麗華さん……」
「ただ」
彼女の声のトーンが、少し変わった。引いたのではなく、別の重さを持った声に。
「だからといって、今すぐ答えが出るわけじゃない。私にも、家があります。父がいます。長年積み上げてきたものがある。まだ、どうすれば正しいのか──私には、分からない」
私は静かに頷いた。
「一つだけ、正直に言わせてください」
麗華さんが、横から私を見た。