社長、その溺愛は計算外です
第10話 君のもとへ
【圭佑 side】
金曜日の朝、午前八時。
俺は、誰よりも早くKIRIHARA TECHのオフィスに到着した。
昨夜はほとんど眠れなかった。梓からの返信──『土曜日、伺います』という短い言葉を、何度も読み返した。
来てくれる。それだけで、今日を戦える気がした。
午前九時、社員たちが次々と出社してきた。みんな、不安そうな顔をしている。契約解除の噂は、既にオフィス中に広まっていた。
「全社員を、会議室に集めてくれ。十時から、全体会議を開く」
副社長の山本に指示を出しながら、俺は窓の外の東京を見下ろした。
今日、全部に決着をつける。
◇
午前十時。
大会議室には、KIRIHARA TECHの全社員二百十名が集まっていた。
俺は、壇上に立った。
「みんな、集まってくれてありがとう。今日、みんなに正直に話したいことがある」
会議室が、しんと静まり返った。
「システック社、デジタルソリューションズ社──主要取引先二社から、契約解除の通知を受けた。この二社は当社の売上の三割を占める。失えば、会社の経営は厳しくなる」
ざわめきが起こる。
「そして……この契約解除の原因は、私にある」
ざわめきが消えた。
「私の個人的な問題で、会社を危機に陥れた。本当に、申し訳ない」
俺は、深く頭を下げた。
沈黙が続いた。