社長、その溺愛は計算外です

第10話 君のもとへ


【圭佑 side】

金曜日の朝、午前八時。

俺は、誰よりも早くKIRIHARA TECHのオフィスに到着した。

昨夜はほとんど眠れなかった。梓からの返信──『土曜日、伺います』という短い言葉を、何度も読み返した。

来てくれる。それだけで、今日を戦える気がした。

午前九時、社員たちが次々と出社してきた。みんな、不安そうな顔をしている。契約解除の噂は、既にオフィス中に広まっていた。

「全社員を、会議室に集めてくれ。十時から、全体会議を開く」

副社長の山本に指示を出しながら、俺は窓の外の東京を見下ろした。

今日、全部に決着をつける。



午前十時。

大会議室には、KIRIHARA TECHの全社員二百十名が集まっていた。

俺は、壇上に立った。

「みんな、集まってくれてありがとう。今日、みんなに正直に話したいことがある」

会議室が、しんと静まり返った。

「システック社、デジタルソリューションズ社──主要取引先二社から、契約解除の通知を受けた。この二社は当社の売上の三割を占める。失えば、会社の経営は厳しくなる」

ざわめきが起こる。

「そして……この契約解除の原因は、私にある」

ざわめきが消えた。

「私の個人的な問題で、会社を危機に陥れた。本当に、申し訳ない」

俺は、深く頭を下げた。

沈黙が続いた。
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