社長、その溺愛は計算外です

しばらくして、開発部長の森田が立ち上がった。

「社長、頭を上げてください」

「森田……」

「俺たちは、社長を信じてこの会社に入りました。大手企業じゃできないことに挑戦したい、エンジニアが本当に誇れるシステムを作りたいって──その言葉を信じて」

営業部の田口が続く。

「正直、不安です。家族もいます。でも……」

一度、言葉を飲み込んでから。

「社長が本気で戦うなら、僕たちもついていきます。新しい営業先、一緒に開拓しましょう」

いくつかの声が、さらに重なる。

言葉が、出なかった。

こんなにも、信じてくれる人たちがいる。

「みんな……ありがとう」

会議を終えた後、俺は副社長の山本を呼んだ。

「今日の午後、桐原グループ本社に行く。父親と、直接対峙する」

山本が、心配そうに俺を見た。

「大丈夫ですか、社長」

「大丈夫だ」

俺は、力強く答えた。



午後二時。桐原グループ本社、最上階の執務室。

「二十四時間、考える時間をやったはずだが」

デスクに座る父親が、冷たい視線で俺を見た。

「はい。そして、決めました」

俺は、父親の目を見て告げた。

「俺は、新谷梓と結婚します」
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