社長、その溺愛は計算外です
しばらくして、開発部長の森田が立ち上がった。
「社長、頭を上げてください」
「森田……」
「俺たちは、社長を信じてこの会社に入りました。大手企業じゃできないことに挑戦したい、エンジニアが本当に誇れるシステムを作りたいって──その言葉を信じて」
営業部の田口が続く。
「正直、不安です。家族もいます。でも……」
一度、言葉を飲み込んでから。
「社長が本気で戦うなら、僕たちもついていきます。新しい営業先、一緒に開拓しましょう」
いくつかの声が、さらに重なる。
言葉が、出なかった。
こんなにも、信じてくれる人たちがいる。
「みんな……ありがとう」
会議を終えた後、俺は副社長の山本を呼んだ。
「今日の午後、桐原グループ本社に行く。父親と、直接対峙する」
山本が、心配そうに俺を見た。
「大丈夫ですか、社長」
「大丈夫だ」
俺は、力強く答えた。
◇
午後二時。桐原グループ本社、最上階の執務室。
「二十四時間、考える時間をやったはずだが」
デスクに座る父親が、冷たい視線で俺を見た。
「はい。そして、決めました」
俺は、父親の目を見て告げた。
「俺は、新谷梓と結婚します」