社長、その溺愛は計算外です

「私も、今のお前と同じようなことを言った覚えがある」

え?

「私も、親に反対されたんだ」

父親がそんな話をするのは、初めてだった。

「彼女は、普通の家庭の娘だった。財閥の跡取りにふさわしくないと言われた。父は激怒し、勘当すると言われた」

「そんなことが……」

「それでも、私は彼女と結婚した」

父親が、デスクの引き出しから古い写真を取り出した。若い頃の父親と母親が、笑顔で写っている。

「私も、同じ書類を突きつけられた。ちょうど、今の私がお前にしているように」

「……サインしようとしたんですか?」

「ああ。だが、父は最後に止めた。『お前の覚悟は分かった。本当に愛しているなら、彼女を幸せにする責任がある』と。そう言って、書類を破り捨てた」

執務室に、静けさが流れた。

「圭佑。お前は……新谷梓さんを、幸せにできるのか」

「はい。必ず、幸せにします」

「どうやって。会社は危機だ。財産もない」
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