社長、その溺愛は計算外です

「確かに、財産はありません。ですが、俺には二百十人の社員がいます」

俺は答えた。

「彼らは、俺を信じてくれている。一緒に立て直すと言ってくれた。そして、俺には技術がある。それだけあれば、何度でもやり直せます」

俺はさらに続ける。

「それに、梓と一緒ならきっと乗り越えられる。……一人で完璧であろうとしていた頃より、今の俺はずっと強いはずです」

父親は、しばらく黙って俺を見ていた。

やがて──相続放棄の書類を、ゆっくりと破り捨てた。

「……お前の覚悟は、分かった。取引先への圧力は、今日中に全て取り下げる。新谷さんへの件も、全て止めさせる」

「父さん……」

「甘えは許さん。KIRIHARA TECHは、お前の力で守れ。自分の実力だけで、証明しろ」

「分かりました」

「ただし」

父親が、書類を破り捨てた後に続ける。
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