社長、その溺愛は計算外です

「跡継ぎの話は、まだ終わりではない。朔が育つまでの間、お前が何らかの形でグループに関わることになるかもしれない。それは、これから話し合いながら決める」

「……はい」

「そして……」

父親が、初めて少し表情を緩めた。

「新谷梓さんを、大切にしろ。お前の母親が、私にとってそうであるように」

胸の奥が、じわりと熱くなった。

「……ありがとうございます、父さん」

「行け。お前の大切な人のもとに」

俺は執務室を出ようとした。

「圭佑」

「はい」

「……今度、新谷梓さんを連れてこい」

その一言に、俺は深く頭を下げた。

「はい。必ず」



執務室を出た後、俺はすぐに麗華に連絡を取った。

午後四時。ホテルのラウンジで、俺は麗華を待った。

やがて、淡いベージュのワンピースに白いカーディガンを羽織った麗華が現れた。何かを決めてきた人の落ち着きが、その佇まいにあった。

「お話があります」

「私にも、あります」

麗華が、先に口を開いた。
< 125 / 171 >

この作品をシェア

pagetop