社長、その溺愛は計算外です

「ええ」

麗華が、頷く。

「申し訳ありません」

俺は深く頭を下げた。

「謝らなくていいんです。これは、家同士の問題でしたから」

麗華が、続ける。

「父は、すぐには納得しないでしょう。しばらく時間がかかるかもしれない。それでも、私の気持ちは決まっています」

その声には、迷いがなかった。

「麗華さんは……これからどうされるのですか」

「まだ分かりません」

彼女が小さく笑った。

「ただ初めて、自分で何かを決めた気がします。それだけで、今は十分です」

しばらくして、彼女が立ち上がった。

「新谷さんを、大切にしてください」

「はい。約束します」

麗華が、ほんの少し口元を緩めた。

「いつか私が本当に愛する人を見つけた時……その時は、お祝いしてくださいね」

その言葉だけを残して、彼女は歩いていった。

その後ろ姿は、来た時よりも確かに軽やかだった。



ホテルを出た後、俺はスマホを取り出した。

【全部、片がつきました。
明日、お会いできるのを楽しみにしています。
十一時、代官山の公園で待っています。
圭佑】

送信ボタンを押した後、俺は夜の街に出た。

梓に会える。

それだけで、明日という日が、もう眩しかった。
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