社長、その溺愛は計算外です
「ええ」
麗華が、頷く。
「申し訳ありません」
俺は深く頭を下げた。
「謝らなくていいんです。これは、家同士の問題でしたから」
麗華が、続ける。
「父は、すぐには納得しないでしょう。しばらく時間がかかるかもしれない。それでも、私の気持ちは決まっています」
その声には、迷いがなかった。
「麗華さんは……これからどうされるのですか」
「まだ分かりません」
彼女が小さく笑った。
「ただ初めて、自分で何かを決めた気がします。それだけで、今は十分です」
しばらくして、彼女が立ち上がった。
「新谷さんを、大切にしてください」
「はい。約束します」
麗華が、ほんの少し口元を緩めた。
「いつか私が本当に愛する人を見つけた時……その時は、お祝いしてくださいね」
その言葉だけを残して、彼女は歩いていった。
その後ろ姿は、来た時よりも確かに軽やかだった。
◇
ホテルを出た後、俺はスマホを取り出した。
【全部、片がつきました。
明日、お会いできるのを楽しみにしています。
十一時、代官山の公園で待っています。
圭佑】
送信ボタンを押した後、俺は夜の街に出た。
梓に会える。
それだけで、明日という日が、もう眩しかった。