社長、その溺愛は計算外です

私たちは、二人で並んで水面を見つめた。

「昨日、父親と話をつけてきました」

圭佑さんが、切り出した。

「桐原グループの跡継ぎも、相続権も、全部捨てる覚悟でサインしようとした。父が止めましたが、俺の気持ちは変わらない」

「そんな……」

言葉が続かなかった。

跡継ぎ、相続権。それが何を意味するか、私にも分かる。

「会社のことは、これから父と話し合いながら決めます。すぐには答えが出ないかもしれない。でも、梓さんへの圧力は全て取り下げさせます。既に動いています」

「……圭佑さん」

「麗華さんとの婚約も、正式に破談になります。麗華さん自身が、そう決めた」

「麗華さんが……」

「ええ。誰に言われてでもなく、自分で選んだんです」

私は唇を噛んだ。

麗華さんが、自分で選んだ。いつも何かに縛られているようだった彼女が。

「……どうして、そこまで?」

「計算したんです。桐原グループを失うことと、君を失うこと。どちらの損失が大きいか」

「……結果は?」
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