社長、その溺愛は計算外です
第2話 深夜、君のそばに
婚活パーティーから一週間後の月曜日。
九月も半ばを過ぎ、朝晩の空気に秋の気配が混じり始めていた。
今日は午前中に、KIRIHARA TECHとの重要な会議が控えている。
『今夜から──君は、俺のものだ』
あの夜の言葉と、その後に届いたメッセージを、この一週間で何度見返したか、もう数えるのをやめた。
返信は、結局送れなかった。何を書けばいいのか、分からなくて。
あの夜のことは、今日は仕事の外に置いておく。そう決めてきた。
今日は、プロジェクトマネージャーとしての新谷梓でいなければならない。
私は自分のデスクに向かい、資料を開いた。
◇
午前十時。桐原圭佑が、いつものように完璧なスーツ姿で会議室に入ってきた。
濃紺のスリーピーススーツ。袖口から覗く高級時計が、さりげなく光っている。
私は立ち上がって一礼した。
彼の顔を見た瞬間、今朝の決意がぐらついた。
だが、彼はいつも通りの顔をしていた。まるで、あの夜のことなど、なかったかのように。
それがなぜか、少し悔しかった。
その時、ふと顔を上げると──彼の目が、私を捉えていた。